2017年9月29日金曜日

布が洋服になるまで

みなさんは毎日服を着ます。しかし、着ている服がどうやって作られているかを本当に知っている人はほとんどいません。デザイナーの頭のなかにある服が、どうやって形になり、みなさんの手元に届くのかを少しだけ紹介したいと思います。

デザイナーはどんな服が良いか絵を書きます。この絵のことを「デザイン画」といいます。みなさんがデザイナーと聞いてイメージするのはパリコレクションでスラリとしたモデルさんがうんと奇抜な服を着て舞台 (ランウェイ) を歩く姿かもしれませんが、普通の服にもデザイナーがいて、普通の服のデザイン画を書いています。

デザイナーが書いたデザイン画から、今度はパターンナーが一つ一つのパーツの型紙 (パターン) を作成します。パターンは服の設計図です。パターンナーは絵に描かれた二次元の服を奥行きのある立体に写し取ります。服のパーツの数は様々ですが、多ければ多いほど美しい立体に仕上がる一方で、縫う部分が増えるのでその分価格に跳ね返って来ます。製造過程まで考えた上でデザイン画をいかに現実のものにできるかが、パターンナーの腕にかかっています。

次に素材を選びます。デザインを具現化する色や質感を考えるのはもちろん、肌触りや耐久性も大切にします。服は作品でもありますが日用品でもありますので、どんなに素敵な仕上がりでも扱いにくいと着なくなってしまいます。

そして試作品 (サンプル) の縫製です。作ってみて調整して、また作る。完全するまでサンプルを捨てつづけることになります。だからこそ、調整されてきちんと作った服は高価なのです。でもその代わり、細かな調整をくぐり抜けた作品は、体にそった見事な立体感と、着る人の魅力を引き上げるデザインが両立します。

そこまで取り組み、やっと店頭に並べられるのが、みなさまが目にする洋服です。手を抜こうと思えばいくらでも安く作れますが、きちんと作ると価格以上の価値があります。一枚の布は、多くの過程を経て、誰かの魅力を引き出すパートナーに変わるのです。

2017年9月1日金曜日

生地の向き

どんな服も、一枚の布から出来ています。工場では、とても長い布をくるくると巻いて、大きな巻物のような状態になった「生地 (きじ) 」から、それぞれのパーツを切り出しています。この切り出す作業のことを「裁断 (さいだん)」といいます。

生地を裁断するときには、型紙を全て同じ方向に置きます。型紙というものは、それぞれ不均一な形をしているので、並べ方次第では生地を節約することもできます。例えば、2つの三角形のパーツの上下逆さにして組み合わせれば、隙間が出来ないので少しの面積からたくさんのパーツを作ることが出来ます。しかし、たとえ無地や上下のない柄の生地の場合でも、私たちはそんな型紙の置き方はしません。

生地は、糸を織り合わせたり編み上げたりして作られます。この製造過程から、生地の向きによって織の加減や繊維の方向などが異なることになります。ですので、生地は光が当たったときに向きによって反射の具合が変わり、微妙に色が違って見えてくるのです。型紙を上下隙間なく置いて作ってしまうと、微妙に色が違って見えるパーツが出来てしまいます。たとえ、気付く人がないくらいそっくりでも、プロはそんなパーツで服を作ったりはしません。

上質・洗練とは、捨てる勇気と譲らない気持ちが支えるものです。安くはないかもしれませんが、真っ当な服を作るためには必要なことなのです。