2019年12月22日日曜日

服を選ぶという文化

私たちは毎日服を選んで着ています。まずは、その日の天気・気温、雨や晴れ、暑い寒いなどの条件を考えて服を選ぶとは思いますが、その時々の気分、元気があったり、少し沈んでいたり、そんなことでも手に取る服は違うでしょう。つまり、着ている洋服はその時々の自分の状況に合わせて選ばれたものです。

しかし、本当にそれだけでしょうか。人が服を選ぶとき、実際には同時に他の人達のことも考えて選んでいるように思います。

例えば結婚式などですと、お祝いとお慶びを伝えられるように、華やかなドレスを選ぶでしょう。しかも、花嫁の色である白の服は主役を際立たせるために選びません。お葬式では、お悔やみや悲しみに合うように、決まった形式の喪服を着ることになります。間違っても、そこに集まっている人達の気持ちを壊してしまわないように、服選びでも気遣いをします。親しい友人とランチに行くときには、親しみや敬意を込めて、相手の好みを考えた服を着て行くでしょう。決めなければならない商談では、ビジネスコードを考えた上で「勝負服」を着ていくかもしれません。

このように、自分のことだけではなく、その日会う人々や行く場所の雰囲気などに合うように服を着ていく、それは「服を選ぶという文化」と言えるでしょう。ただ服を選ぶというそれだけのことでも、私たちは少しずつ社会に参加し、文化を形作っているのです。

2018年7月30日月曜日

袖を付ける

服は様々なパーツで出来ています。それぞれのパーツの出来不出来によって、全体の印象は大きく左右されます。その中でも、特に袖 (そで) の仕上がりは服の品格を決める重要な要素です。

胴体部分つまり身頃 (みごろ) に袖をつける工程は、平面の布を縫い合わせて立体にする必要があるため、簡単ではありません。デザインにもよりますが、袖が身頃にふわりと載っていることが、袖の取り付けとして最良な状態です。

良い仕上がりのために、袖の縫代 (ぬいしろ) に非常に細かいしわを入れます。このとき、しわを入れようと意識するのではなく、二枚の布のひっぱり加減で機械自体が細かいしわを入れるという感覚で縫うと、表側には響かせずに立体的な袖がつきます。

このように縫われた袖は、自然に身頃に沿うように出来上がるのです。それは、縫う人の熟練の技術と豊富な経験で出来ることであり、これらが服の上質さを支えています。

2017年12月31日日曜日

きれいな縫い目

ミシンは上糸と下糸の二本の糸が布の間で絡む事で縫うことができます。ですので、縫い目はこの二本の糸の引き合うバランスに大きく影響されます。この引く力が弱くて糸が布から浮き上がるようではいけないし、強くて布が引きつれているようでもいけません。縫い目のひとつひとつの長さは、デザインや着やすさを考えて決められます。このとき布の性質 (厚さと柔らかさや伸縮性)、耐久性を意識します。また、直線であるべきところは真っ直ぐに、曲がっているべきところは美しいカーブを描くように、正しく縫えていることも重要な要素の一つです。

このような、美しく、正しい縫い目を作るためには布の性質に応じてミシンの調整をする必要があります。それだけではなく、布によっては、縫い合わせる布の下の布を引っ張り気味にするなど、手による力加減でさらに調整しなければきれいに縫い合わせられないこともあります。精緻な調整と繊細な力加減が必要なのです。

美しい縫い方で仕上げられた服は、人に着せても自然な形で、デザインがきれいに出るのです。縫い目のきれいさこそが、仕上がりの良さを決めるのです。