2017年12月31日日曜日

きれいな縫い目

ミシンは上糸と下糸の二本の糸が布の間で絡む事で縫うことができます。ですので、縫い目はこの二本の糸の引き合うバランスに大きく影響されます。この引く力が弱くて糸が布から浮き上がるようではいけないし、強くて布が引きつれているようでもいけません。縫い目のひとつひとつの長さは、デザインや着やすさを考えて決められます。このとき布の性質 (厚さと柔らかさや伸縮性)、耐久性を意識します。また、直線であるべきところは真っ直ぐに、曲がっているべきところは美しいカーブを描くように、正しく縫えていることも重要な要素の一つです。

このような、美しく、正しい縫い目を作るためには布の性質に応じてミシンの調整をする必要があります。それだけではなく、布によっては、縫い合わせる布の下の布を引っ張り気味にするなど、手による力加減でさらに調整しなければきれいに縫い合わせられないこともあります。精緻な調整と繊細な力加減が必要なのです。

美しい縫い方で仕上げられた服は、人に着せても自然な形で、デザインがきれいに出るのです。縫い目のきれいさこそが、仕上がりの良さを決めるのです。

2017年11月30日木曜日

生地の厚さ

縫製工場では生地の厚さに気を使います。布の厚さなんて大したことないと思うかもしれませんが、場合によっては非常に重要になってきます。

厚みのあるコート、例えばキルティングのコートを作るとします。そうした場合、制作にあたって同じ色柄の生地を3種類は用意します。同じ色柄の普通の厚み、それよりも半分の厚み、もっと薄い生地の3つです。

服は、その部分によって、重なる生地の枚数が違います。もしも、1種類の厚さの生地でキルティングのコートを作ったとすると、ポケットのような何枚も重なる部分はゴワゴワに、逆に本体部分は重なりが少ないので薄くなってしまいます。そこで、前もって厚みが異なる生地を数種類用意して、たくさん重なる部分には薄めの生地を、そうでない部分には厚い生地を使うことで、完成した時の厚みが全て統一され、スッキリとまとまるのです。前面ポケットの縁や、重ねた所、背中、フードなどどの部分もみんな同じ厚さになります。こうした工夫の結果、嵩張らずに違和感なく楽に着られますし、見た目も体に添ってすっきり洗練されたコートが出来上がるのです。

生地を買うときには3種類の生地を少しずつ注文するという訳にはいきませんので、1着あたりたくさんの生地が使われることになります。その分値段は高くなってしまいますが、真っ当な服を作るためには必要なことなのです。

2017年10月31日火曜日

布を歪ませない努力

どんな洋服も、布から出来ています。全てのはじまりは一枚の大きな布です。

服を仕立てる第一歩は、布を切る(裁断をする)ところから始まります。布なんて薄っぺらいもの、切るなんて簡単と思うかもしれません。でも、実は裁断は奥が深く、慎重に切らないと服が台無しになってしまうのです。

布は伸びたり、縮んだり、シワが出来たりします。そこで、まず布が垂れ下がらない大きさの、とっても広い台に乗せます。(東洋ソーイングの裁断台は、横2m縦7mあります。)
そして、生地の縦糸と横糸が直角になるように、ぴったり合わせてから型紙を置きます。準備ができたら、ずれがないように型紙と同じ形に裁断します。広い台を使うのも、縦糸と横糸を見て型紙の角度を調整するのも、全ては、布に歪みを出さない為の努力です。

布の歪みが全く無いように仕立てられた服は、長時間着ていてもずれてきません。肩は肩に、前中心は中心に、脇線は脇におさまります。動いた時も自然で、服と身体が離れません。その状態を、人は『着心地がいい』と呼ぶのです。

身体にぴたりと寄り添う仕立て。もちろんデザインが映える前提もここにあります。真っ当な服は、第一歩から丁寧に仕事をしています。

2017年9月29日金曜日

布が洋服になるまで

みなさんは毎日服を着ます。しかし、着ている服がどうやって作られているかを本当に知っている人はほとんどいません。デザイナーの頭のなかにある服が、どうやって形になり、みなさんの手元に届くのかを少しだけ紹介したいと思います。

デザイナーはどんな服が良いか絵を書きます。この絵のことを「デザイン画」といいます。みなさんがデザイナーと聞いてイメージするのはパリコレクションでスラリとしたモデルさんがうんと奇抜な服を着て舞台 (ランウェイ) を歩く姿かもしれませんが、普通の服にもデザイナーがいて、普通の服のデザイン画を書いています。

デザイナーが書いたデザイン画から、今度はパターンナーが一つ一つのパーツの型紙 (パターン) を作成します。パターンは服の設計図です。パターンナーは絵に描かれた二次元の服を奥行きのある立体に写し取ります。服のパーツの数は様々ですが、多ければ多いほど美しい立体に仕上がる一方で、縫う部分が増えるのでその分価格に跳ね返って来ます。製造過程まで考えた上でデザイン画をいかに現実のものにできるかが、パターンナーの腕にかかっています。

次に素材を選びます。デザインを具現化する色や質感を考えるのはもちろん、肌触りや耐久性も大切にします。服は作品でもありますが日用品でもありますので、どんなに素敵な仕上がりでも扱いにくいと着なくなってしまいます。

そして試作品 (サンプル) の縫製です。作ってみて調整して、また作る。完全するまでサンプルを捨てつづけることになります。だからこそ、調整されてきちんと作った服は高価なのです。でもその代わり、細かな調整をくぐり抜けた作品は、体にそった見事な立体感と、着る人の魅力を引き上げるデザインが両立します。

そこまで取り組み、やっと店頭に並べられるのが、みなさまが目にする洋服です。手を抜こうと思えばいくらでも安く作れますが、きちんと作ると価格以上の価値があります。一枚の布は、多くの過程を経て、誰かの魅力を引き出すパートナーに変わるのです。

2017年9月1日金曜日

生地の向き

どんな服も、一枚の布から出来ています。工場では、とても長い布をくるくると巻いて、大きな巻物のような状態になった「生地 (きじ) 」から、それぞれのパーツを切り出しています。この切り出す作業のことを「裁断 (さいだん)」といいます。

生地を裁断するときには、型紙を全て同じ方向に置きます。型紙というものは、それぞれ不均一な形をしているので、並べ方次第では生地を節約することもできます。例えば、2つの三角形のパーツの上下逆さにして組み合わせれば、隙間が出来ないので少しの面積からたくさんのパーツを作ることが出来ます。しかし、たとえ無地や上下のない柄の生地の場合でも、私たちはそんな型紙の置き方はしません。

生地は、糸を織り合わせたり編み上げたりして作られます。この製造過程から、生地の向きによって織の加減や繊維の方向などが異なることになります。ですので、生地は光が当たったときに向きによって反射の具合が変わり、微妙に色が違って見えてくるのです。型紙を上下隙間なく置いて作ってしまうと、微妙に色が違って見えるパーツが出来てしまいます。たとえ、気付く人がないくらいそっくりでも、プロはそんなパーツで服を作ったりはしません。

上質・洗練とは、捨てる勇気と譲らない気持ちが支えるものです。安くはないかもしれませんが、真っ当な服を作るためには必要なことなのです。

2017年8月31日木曜日

服づくりのお話

服を作ることは、簡単ではありません。一つの服を作り上げるためには多くの工程や難しい操作がたくさんあります。しかし同時に、とてもおもしろいお仕事です。
このコラムでは生地と服についての話を書いていきます。読んでいただければ、違った視点から服が見えてくるのではないかと思います。お暇なときにお付き合いください。